三和木ブログ
miwaki Blog
2025.07.04
ゆるやかな曲線に宿る、日本の美意識。むくり屋根の家
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- コラム、モデルハウスのご紹介
日本建築には、古くから「かたち」に込める美意識が受け継がれてきました。
そのひとつが「むくり屋根」です。
直線的な屋根と異なり、屋根の面がわずかにふくらみを帯びるこの形は、やわらかな曲線を描きながら、静かに、しかし確かに見る人の心を惹きつけます。
むくり屋根は、もともと数寄屋建築や町屋、公家屋敷などに多く見られた日本独自の屋根形式で、どこか控えめで品のある佇まいを持っています。
そのふくらみはほんのわずかですが、直線的な屋根とは異なる奥ゆかしさや、あたたかみのようなものを感じさせてくれます。
三和木の岡崎展示場では、この伝統的なむくり屋根を、現代の暮らしと調和させたかたちで取り入れています。
丸みのある屋根の下には、選び抜いた上質な木材と、確かな技術を持つ職人の手仕事が息づいています。
構造材から内装にいたるまで、時間が経つほどに味わいが増し、世代を超えて住み継げる家づくりを目指している私たちにとって、むくり屋根はその象徴ともいえる存在です。
この屋根を支えるためには、高度な加工技術が欠かせません。
屋根の傾斜を形づくる「垂木」と呼ばれる部材ひとつひとつに、微細な調整が求められるからです。
均一で美しいふくらみを実現するには、長年の経験と精緻な手仕事が必要とされます。
機能面でも、むくり屋根にはさまざまな利点があります。
水はけがよく、雨仕舞いに優れているため、屋根そのものの耐久性も高まります。
また、柔らかな勾配が、夏の強い日差しや冬の冷気をやわらげ、室内環境を快適に保つ助けにもなります。
見た目の美しさだけではなく、住まい手の暮らしを支え、住まいそのものの寿命を延ばすこと。
それこそが、私たちが大切にしている家づくりの姿勢です。
自然の素材を活かし、過剰ではないけれど品格があり、年月を重ねるごとに趣が増していく住まい。
むくり屋根には、そうした「侘び寂び」の精神が、かたちとなって現れているようにも感じます。
やわらかな曲線を持つ屋根の下に広がる、静かで穏やかな時間。そこに流れる空気まで、どこかしらやさしい。
そんな空間をこれからも、素材と技術にこだわりながら、ていねいにかたちにしていきたいと考えています。
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